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ヴィジュアル系の歴史

「ヴィジュアル系」 は大げさで中性的なスタイルと表現されることが多い。グラムロック、パンクロック、歌舞伎の影響だ。X Japan (Xジャパン)、BUCK-TICK (バクチク)、D’ERLANGER (デランジェ)、Color (カラー) の人気に伴い80年代に爆発的ブームとなった。日本独特の名だたるサブカルチャー・ムーブメントの1つだ。パフォーマンスは派手で、奇抜なヴィジュアルをもっと過激にするためにメンバーがさまざまなキャラクターに扮することもある。おどろおどろしいメイクの吸血鬼がライブで歌うのを想像してみて。ヴィジュアル系がどのように生まれたのかを見てみよう。

X Japanはヴィジュアル系の先駆者とされている。この革新的なバンドはリーダーのYOSHIKIによって結成された。彼はKiss (キッス)、Sex Pistols (セックス・ピストルズ)、David Bowie (デヴィッド・ボウイ)、Queen (クイーン) などを好んで聴いていたので、彼らのサウンドとヴィジュアルはその影響をどっぷり受けている。こうしてロックと芸術的なメイク、衣装とが一体化した。1980年代後半、X Japanはこの新しい衝撃的なヴィジュアルとサウンドを日本に広めたが、その呼称を誰も知らなかった。「ヴィジュアル系」という名称ができる前にこの過激なスタイルを取り入れたバンドは「お化粧系」と呼ばれたが、雑誌 『SHOXX (ショックス)』の 編集長、星子誠一氏は、「お化粧系」では表現が「安っぽすぎ」て音楽性やパフォーマンスが下手な見かけ倒しのようでバンドやファンへ失礼だと感じた。そこで 『SHOXX』 誌はX Japanのキャッチコピー “Psychedelic Violence Crime of Visual Shock” (サイケデリック バイオレンス クライム オブ ヴィジュアルショック) からヒントを得て 「ヴィジュアルショック系」 という呼称を使い始める。やがて 「ヴィジュアル系」 と簡略化され、そのジャンルを表す名として定着した。

 

Image courtesy of i-D magazine

ヴィジュアル系は音楽ジャンルか、それともファッションか。 これについてはさんざん論じられてきた。その曖昧さはおそらく、ヴィジュアル系はミュージシャン関連の言葉なので、ほぼ音楽ジャンルに限って使われる事から来ている。ところが今やヴィジュアル系は、パンクやエモのように、音楽とファッションの境界を越えてしまった。しかもいくつもの音楽ジャンルを飛び越えており、すべてはバンドメンバーの型破りなヴィジュアルによって一つながりになっている。
星子氏はヴィジュアル系というものを、そのファッションも含めて 「日本独特の音楽ジャンル」 だと考えている。彼にとってアーティストの見た目は、彼らの音楽と同様に重要だ。ヴィジュアル系アーティスト自身は、音楽ジャンルとファッションのどちらに分類するかを決めかねているようだ。例えばX JapanのYOSHIKIは2011年のインタビューでこう言った。「…ヴィジュアル系はスピリットのようなもので、音楽のスタイルではありません…自分を物語る自由、自分を表現する自由。それがヴィジュアル系だと信じます」

ヴィジュアル系のファッションと音楽はますます多くのファンに受け入れられるようになった。90年代に入る頃にはかなりの人気となり、数え切れないほど多くのバンドが 「ヴィジュアル系バンド」と呼ばれていた。その中にはDir En Grey (ディル・アン・グレイ)、L’Arc-en-Ciel (ラルクアンシエル)、Malice Mizer (マリスミゼル) がいる。彼らは見た目も音響的にもジャンルを飛び越えて人気があったが、どのバンドも一貫して 「ヴィジュアル系」 と呼ばれていた。注目すべきは、Malice MizerのMana (マナ) がGothic Lolita (ゴシックロリータ) という別のファッションを生み出したこと。これは全く不思議なことではない。ロリータファッションのファンはヴィジュアル系のファンでもあるからだ。こうして2つのジャンルのファッションが重なり合う事は珍しくなかった。90年代の全盛期の後、ヴィジュアル系をめぐる誇大な売り込みは落ち着きを見せ始め、2000年代初めから中頃にかけては 「オシャレ系」、「アングラ系」 のようなファッションが現れて「ネオヴィジュアル系」ムーブメントが起こる。これは、音楽よりもバンドメンバーのルックスやカリスマ性が重要視され、むしろ日本のアイドル的な盛り上がりに近かった。

 

Image courtesy of Amino Apps

『SHOXX』 誌は2016年に廃刊となったが、これは同時に派手なヴィジュアル系の時代の終わりでもあった。新しいヴィジュアル系バンドが出てきても、同じ数だけ消えていくように思える。でもヴィジュアル系シーンはまだ終わってはいない。例えばL’Arc-en-Cielが開催した結成30周年を祝うライブに10万人のファンが詰めかけたように、ヴィジュアル系ファンの声援はまだまだ続くのだ。

 

Written by Choom, translated by Tomoko.

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