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ガーリーファッションの歴史; ラルム系とフェアリー系 (Part 2)

2010年代の原宿では、パステル調やレトロカラー、エレガンスもダサさもひっくるめてフェミニンファッションが咲きほこっていた。「フェアリー系」 ファンは、夢見る心と子ども時代のノスタルジーをミックスした服を作るために、古着屋で掘り出した80年代のヴィンテージ素材をつなぎ合わせる。その一方で、「ラルム系」 女子は愛読誌 『LARME (ラルム)』 から大人っぽくロマンティックで乙女チックなテイストを取り入れた独自のフレンチファッションを作り出す。ラルム系とフェアリー系は、原宿ファッションの中でもとりわけ国際的な人気があり熱心な海外ファン層を持つ。ガーリーファッションがどのように発展してきたかを見てみよう!

ラルム系とフェアリー系で共通しているのは、ファッションムーブメントをけん引する少数のクリエイターの存在だ。ムーブメントの火付け役は多くのクリエイターの夢。ラルム系では後に雑誌 『LARME』 の編集長となる中郡暖菜 (なかごおり はるな) だ。2008年に 『小悪魔ageha (こあくまアゲハ)』 の編集長としてスタイリングと出版の仕事の経験を積んだ。『小悪魔ageha』 は2005年~2014年に発行されていたギャル雑誌で、『LARME』 で見られる姫ギャルの少女っぽさや、ピンクの縁取りや影には 『小悪魔ageha』 の影響が現れている。
中郡のスタイリングは、抑え気味の大人っぽいスタイルへと徐々に変わっていったが、これはギャル人口の減少を受けてのことだった。女性は20代になるとオルタナティブファッションを卒業したがるものだ。折しも当時、 ラルム系もオフィス向けのスタイルになってきていた。

 

Image courtesy of mypasteluniverse via Tumblr

 

中郡が初めて 雑誌 『LARME』 を 『小悪魔ageha』 の発行者へ売り込んだ時、複雑な出版事情のため企画はボツになった。次の徳間書店では 「甘くて可愛い女の子っぽいファッションの絵本」 とアピールして成功し、出版。それが大ヒットした。 「『LARME』 の企画の成功は想定内でした。なぜなら当時既に、ネットやSNSでは甘くて可愛いモノ好きの女性たちのコミュニティーがあったからです。ガーリーファッション好きのモデルもいました」 と中郡。 『LARME』 スタイルはただ単に時代の流行を追うだけでなく、トレンドを 『LARME』 らしく取り入れる。彼女は独自のスタイリングを他から際立たせようとした。例えばリボンやパール、黒と抑え目のパステルカラーなどのキーポイントがあればすぐ 「『LARME』 だね」 と分かるように。
中郡は26歳の若さで、3年間に200万部以上の 『LARME』 を販売。人気モデルの中村里砂やAMOが 「『LARME』 系女子」 の世界を紹介、ファッションとライフスタイルの両方をPRした。どの 『LARME』 も当初の企画通り、 「読書と美術館めぐり」 が好きな 「カルチャーガール」 の物語集だった。

 

 

雑誌 『LARME』 が乙女ファッションのアイコン的存在になった一方でフェアリー系の物品を扱う店が現れ、その新たなスタイル出現の準備が整い始めていた。ようやく2004年にバンタンデザイン研究所出身の田淵さゆりがSpank! というヴィンテージショップを開店し、独特なスタイルのフェアリー系が登場する。Spank! には、田淵のファンシーでキッチュな80年代ワンダーランドのような世界観がぎゅっと詰め込まれている。Spank! の店内は色とりどりのフワフワなぬいぐるみや80年代のおもちゃでいっぱい。床も部屋着、米国製Tシャツ、パステルカラーのセーターでびっしり。田淵はヴィンテージ服の販売だけでなく自らデザインもしていたが、多くはヴィンテージ生地を使ったもの。開店時、ファッション誌は80年代のこうしたパステルカラー愛好家たちを 「Spank! ガールズ」 と名付けたが3ヶ月後、雑誌 『Zipper』 が 「フェアリー系」 という言葉を発案した。その後、この呼び名は雑誌 『CUTiE』 で紹介され他誌へと広がった。『LARME』 と同じくフェアリー系も、雑誌で取り上げられることは成長するための必須条件だった。こうして東京の小さな店で始まったことがファッションムーブメントになった。

 

Image courtesy of lovemehugmespankme via Tumblr

 

フェアリー系人気の最初のピークは2000年代の初めから中頃までで、2010年以降はしばらくパッとしなかった。しかし2014年、ポップスターのきゃりーぱみゅぱみゅが田淵デザインのコスチュームで 「ゆめのはじまりんりん」 を歌ったことをきっかけに人気が再燃。フェアリー系でもそれぞれ個性の違うインディーズブランド店が原宿に開店した。NILE PERCHの幻想的な雰囲気の服は大人しい色とシルエットだが、LISTEN FLAVOUR (リッスン フレーバー) とmilklim (ミルクリーム) は大胆な配色とグラフィックTシャツで80年代ポップの原点を表す、といった感じ。
現在もSpank! の人気は根強く、オンラインストアのアップデートや、ホームページでの最新の手作り品アップも定期的に行われている。フェアリー系は、お金をかけないこと、ハンドメイドであること、アップサイクルできることに重きが置かれているため、自分で何かを作ってみたい人やそのための時間のある人にとっては、とっつき易いジャンルだ。新しいインディーズブランドは世界でもあちこちで生まれており、フェアリー系の躍進は続く。

2000年代にはラルムやフェアリー系のような新しいファッションが街に広がった。あれから20年経った今、どちらにも昔と変わらない忠実なファンがいる。『LARME』 誌は復活しSpank! も中野ブロードウェイに新店がオープンした。ガーリーファッションの復活もきっと実現するだろう。

Written by Selina, translated by Tomoko.

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