ネットバッシング: ポップカルチャーにおける真の悪者は誰?
近頃は、大した悪事を働かなくても悪者と見なされるようだ。有名人ともなれば、少しの不適切な行動すら非難を浴びるきっかけになる。わたしたちにとっては有名人の落ち度を指摘するのは簡単で、実際とても楽しいものかもしれない。だが果たして、わたしたちに人を批判する権利はあるのだろうか?
Logan Paul (ローガン・ポール) の名を聞けば、ある種の有名人は悪者になるために生まれてきたと思ってしまうだろう。彼のYouTube動画は当初から反感を買うようなもので、ヴェネツィアでは運河に飛び込んだり、東京では大きなモンスターボールを寿司屋の店員に投げつけたりしていた。中でもこれまでで最も議論を呼んだのは、日本の自殺の名所として知られる樹海で遺体のそばに立つ自身を映した動画ではないだろうか。Logan Paulは随分と昔に、嬉々として悪者の人格を身に付けたようだ。
Image courtesy of New York Times.
Kim Kardashian (キム・カーダシアン) とメディアのバトルは、いつもすさまじい。彼女が食欲抑制キャンディーや、直近だと、補正下着ブランド『KIMONO』の広告を出した時のことを覚えているだろうか? これは、着る人の身体のラインを強調するような、身体にぴったりフィットするアイテムのブランドだ。日本の伝統的でエレガントな着物と聞いて、思い浮かぶものでもないだろう。ブランド名をソーシャルメディアで発表すると、「文化盗用である」と国内外からすさまじい反対の声が上がり、ハッシュタグ#KimOhNo (ブランド名を非難し、変更を呼びかける) まで生まれた。
その一方で、鈴木亜美のような有名人もいる。鈴木亜美に関することは不明瞭であり、実際に彼女の「邪悪な」人格は日本のメディアによって与えられていたようだ。アイドル歌手としてキャリアをスタートさせた彼女はすぐに、同じく歌手の浜崎あゆみのライバルとして売り出された。彼女はのちに、所属事務所を相手に所属契約を解除するための訴訟を起こし、音楽業界から姿を消すことになる。世間は彼女を、業界のルールや芸能人仲間に逆らう悪者であるとして、実際に彼女の身に何が起こっているか、そして業界の真実について、彼女の言い分に聞く耳を持たなかったのだ。
世間には、有名人を悪者として叩きたくて
彼らが失態をおかすのを、今か今かと待ち望んでいる人もいる
有名人のモチベーションになりそうなものはともかく、不祥事を過剰に気にすることで「善 vs 悪」劇場を盛り上げてはいないか? Logan Paulがネット上のエンタメのために異文化を軽視できるのには、きっと理由があるはずだ。マスコミが鈴木亜美を悪者に仕立て上げることにしたのも、そうだろう。有名人を悪者として叩きたくて、彼らが失態をおかすのを、今か今かと待ち望んでいる人がいるようだ。
誰かを悪者に仕立て上げれば、必然的に自分はヒーローを演じることになる。味方がたくさんいればなおさらだ。しかしソーシャルメディアのような実体のない空間では、小さな声も10倍に膨れ上がり、そしてそれが大衆の声かのようになっていくのだろう。自分が満足したいがために、自分が個人的に悪と考える行動をした誰かに対して「償い」を強いることは、本当にわたしたちがすべきことなのだろうか?
Image courtesy of Tube Filter.
Logan Paulのネット上で見せている姿は、とてもじゃないが思いやりがあり礼儀正しい人には見えないということには、みんな同意するだろう。Logan Paulは、行いを償えと叩かれた後に謝罪し、しばらくの間YouTubeから追放されていたが、現在は動画配信を再開している。鈴木亜美は長らく芸能活動を休止した後、2003年にインディーズレーベル『AMITY』を立ち上げて復帰したが、当時彼女が受けた不当な扱いについては触れないようにしていた。Kim Kardashianに関しては、ブランド名を『SKIMS (スキムス)』に改名し、バッシングはすぐに収束していった。
こうした有名人は自身の行動が招いた結果に直面したが、対処する方法はそれぞれ異なるものだった。彼らを悪者として叩くことは簡単である一方、その論争に隠された本当の黒幕は誰なのか、そしてその黒幕が、メディアで取り上げられている有名人についての話にどんな影響を与えているかは忘れがちである。対処すべき不祥事があることも確かだが、鈴木亜美の例で考えると、ただ善か悪かという単純な条件で考えることは、往々にして間違ったストーリーを生むものだ。
・・・
人は誰でも過ちをおかすのだから、みんな公平な判断を受けるべきではないか。有名人に対して多少なりとも力を行使できるからといって善人を演じることは、本当に考え直すべきだ。Logan Paulがエンタメのために越えてはいけない一線を越えたことや、Kim Kardashianが日本の文化を盗用したことには間違いないが、わたしたちが詳細を知ることはほとんどないのだ。では、誰が悪者で誰が善人なのかを決めるのは、わたしたちなのだろうか?
Written by Stefanie, translated by Chinatsu.
Featured image courtesy of Arama Japan.