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桜キッス: 漫画の世界の恋模様

本や映画は日常を忘れさせてくれるが、漫画も例外ではない。現実世界の恋愛はストレスになり得るのに対して、漫画はわたしたちを空想の世界へと連れて行ってくれるし、その可能性は底無しだ! 好きな人とただ相合傘をするようなシンプルな場面も、自分に想いを寄せる15人もの男たちとひとつ屋根の下に暮らすという行き過ぎた設定だってそうだろう。そしてそうしたロマンチックな空想に浸れる描写はたくさん出てくる。どうやら漫画家というのは、胸がときめくような仕草で物語にドキドキ感を生んでいくという芸術を完成させてきたようだ。みんな大好きな壁ドンや、腕をつかんで引き寄せる腕グイを、わたしたちは待ち望んでいる。

漫画界にはユニークなジャンルがたくさんあるから、読みたいものがいつでも見つかるだろう。アクション、日常系、魔法系、そしてもちろん恋愛ものも! 初恋というのはやはり良いものだが、高校漫画がその心の機微を巧みに描き出していると言える。気持ちがたかぶりホルモンが刺激されたところでのキュンとするおどけた仕草は、読んでいて楽しいものだ。『桜蘭高校ホスト部』のような高校漫画では胸キュンをとても重要視している!

『美少女戦士セーラームーン』は、
どんな障害も乗り越えるうさぎとまもるの真実の
愛がなければ完結しない。

日常系漫画は人生の浮き沈みを描いていて、そして人と人との結びつきも取り上げられている。『NANA』のような漫画に、友情、夢を追う苦悩、そして恋愛のストーリーが、バランスよく盛り込まれているように。少女漫画はその物語に恋愛を組み込む。『美少女戦士セーラームーン』で言うと、どんな障害も乗り越えるうさぎとまもるの真実の愛がなければ完結しないのだ。

しかし、どのようにしてわたしたちはそうしたストーリーにハマッていくのか。小説やコミックのように、漫画には読む人を引き付ける独特の描写があって、それがわたしたちを恋愛ものにハマらせていくのだ。恋愛漫画の代名詞とも言える胸キュンな仕草もたくさんあって、幾分やりすぎなものもある。Anime News Network (アニメ・ニュース・ネットワーク) による日本の漫画読者の調査では、頭ポンポンが1番人気だという結果が出た。優しく髪をくしゃっとするだけでも、十分ドキドキするだろう。

他にも、シンプルだけど効果絶大なあすなろ抱き (後ろからのハグ) は、漫画『あすなろ白書』にちなんで名付けられた。そしてその他上位に挙がるものに腕グイもある。腕で人を引き寄せる行為は独占欲や支配欲があるように見えるが、なんともときめいてしまうやり方だ!

 

Image courtesy of lilyginnyblackv2 via Tumblr.

いかにも漫画っぽい仕草に、壁ドンがある。このかっこいい仕草を知らない人のために説明すると、壁ドンとは相手を壁際に押しやり、壁にドンと手を突いて相手に迫るものだ。壁ドンからは、足ドンや両手ドンなど、死ぬほどたくさんのパロディが生まれた。最初はロマンチックに見えないのは分かるけど、心臓がドキドキしてくるだろう!

しかし、こうした描写と日本のカップルたちの日常のやりとりとでは、大きく異なる。ポップカルチャーは理想化された日々を映し出すが、間違いなく漫画もそうだ。空想の世界に逃避させてくれるから、この上なくキュンとする仕草がシンプルな触れ方であることにも頷ける。そうした胸キュンな仕草はまったくロマンチックじゃないと思うかもしれない。腕グイのように、やりすぎなものもあるのだ。壁ドンなんかは、完全にやりすぎだ。しかしこうした意見の違いは、文化の違いに原因がある。

 

Image courtesy of Learn Japanese with Anime.

身体的接触を介した繋がりは日本の文化の本質にそぐわない。集まったあと別れる時、西洋ではハグや「ブロハグ」(おちゃらけたりせず男同士が両腕でするハグ) をするのに対し、日本では輪になって別れの挨拶を言い合うかハイタッチをするだけだ。触れるということは恋人とのみするものであり、それでもなお手を繋ぐカップルを見ることもあまりない。お金さえ払えば可愛い女の子と添い寝ができる添い寝カフェという文化現象を聞いたことがあるのではないか。そして、レンタル彼氏・レンタル彼女というサービスまで存在するらしい。まるで孤独なオタクのハンドブックからそのまま出てきたかのようなもので、決して日本の文化の軸ではない。そう、わたしたちは2次元の胸キュンシーンやコミカルなシーンをちょっと楽しんでいる。一方で、その2次元の楽しみは3次元の世界で手に入れる身体的な繋がりに最も近しいものになる人もいる。心が通い合っているかどうかは別として。

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漫画には膨大なジャンルが存在し、それぞれに独自の描写がある。頭ポンポンや腕グイ、壁ドンのような仕草は、読む人をドキドキさせる効果として漫画の中に度々登場する。そして漫画ファンの欲は深いものである! しかしそうした空想的な描写は漫画の世界でのみ展開される。なぜなら胸キュンな仕草は、現実の世界では閉ざされた空間の中でのみ起き、町のカフェや高校では起きない。日本の文化では、漫画だけが、人前でイチャイチャしているのを見る唯一の手段なのだ。だから、もしもバックハグなんかを強く欲しているのであれば、行くべき場所は町の漫画喫茶かもしれない。

 

Written by Choom, translated by Chinatsu.
Featured image courtesy of Comic Book.

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