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ペアルックって、あり?

あなたの好きな有名人カップルであろうと街にいるカップルであろうと、どういうわけか、おそろいの服を着ているカップルの好感度は高い。ただ見ているだけの人たちに言っておくと、彼らが目立っているのは、スタイルが他とは違ったり、コーディネートの調和が取れているからこそだ。ペアルックをする意図がどうあれ、完璧にまとめられたコーディネートには、その見た目以上の確かな何かがあるだろう。

ペアルックカップルの出現以前には、まったく同じ格好をする双子が存在した。『Sister Sister (シスター・シスター)』の Tia (ティア) と Tamera (タメラ)、『The Suite Life of Zack & Cody (スイート・ライフ)』の Dylan (ディラン) と Cole (コール) たちがその例だろう。90年代、双子ファッションは大ブームを巻き起こし、特に雑誌で多く取り上げられていた。雑誌を開けば『Full House (フルハウス)』の Mary Kate (メアリー=ケイト) と Ashley (アシュレー) のオルセン姉妹や、双子で女優のマナカナでいっぱいだったのである。日本においては、50年代にペアスタイルや、今で言う「おそろ」が流行りだした。双子の女性歌手『ザ・ピーナッツ』(エミとユミのデュオ) が音楽シーンに台頭すれば、観ている人は惑わされたものだ。まったく同じ衣装を着ていて、わたしたちが双子を見る時によくあるように「どっちがどっち?」と見分けがつかなくさせられたのだ。2人を見分ける唯一の手段がエミの顔にあるホクロだったのに、ユミが顔にホクロを描き出したものだから、みんなはやっぱり混乱したのである。

 

Image courtesy of Japan Times.

最近では、たくさんのカップルがペアルックをするようになったし、仲の良い友達同士でも双子コーデをしているのをよく見かける。そしてもちろん、有名人のペアルックを象徴する Britney (ブリトニー) と Justin (ジャスティン) のデニムオンデニム、J.Lo (ジェニファー・ロペス) と Puff Daddy (パフ・ダディ) のオールホワイトは忘れてはならない。パーソナルスタイリストの Lauren Messiah (ローレン・メサイア) と人間関係の専門家 Nikki Goldstein (ニッキ―・ゴールドスタイン) によると、カップルは付き合い始めて6ヶ月前後で、知らず知らずのうちに似た着こなしをし始めるのだそうだ。なぜかって? みんな相手にとって「お似合い」になりたいのだろう。

パワーカップルになることに憧れを抱く人は多い。パワーカップルは、Instagramのハッシュタグ『#RelationshipGoals』というコンセプトを代表する、自信に満ちて堂々としているカップルだけではない。彼らはもう見た目からしてパワーカップルなのだ。Beyonce (ビヨンセ) とJay-Z (ジェイ・Z) の楽曲『Apes**t』のミュージックビデオで2人がしていた、ペアルックは伝説的なものとなり、ルーヴル美術館がこのビデオに出てくる美術品を主軸としたツアーを組んだほどだ。わたしたちはパワーカップルを見ることが好きだが、彼らが成功していておしゃれであればより惹きつけられる。

 

Image courtesy of Rolling Stone.

日本では、カップルが相手と同じような格好をするのは普通のことだ。ディズニーランドやディズニーシーに行ったことがあれば、おそろいにしているカップルたちを見かけたことがあるのではないだろうか。日本人カップルがペアルックをするとしたら、かわいく見えてい
ることが、着こなしがまとまっているかどうかに大きく関わってくる。嬉しそうに恋人とおそろいのキーホルダーやらミッキーミニーのヘアバンドやらを付けているカップルなんて、とてもかわいいではないか。強い絆を感じつい見とれるうえに、かわいいということは、見ている人にとって2人自身やその関係性が親しみやすくて愛らしいということだ。

日本のストリートファッションシーンにおいては、マサオとタカコという夫婦がいる。2人は2018年から、『Tokyo Fashion (東京ファッション)』というメディアにスナップ撮影されるようになった。2人が言うには、ファッションはカップルの絆を強くし、ありのままの相手を受け入れられるようにするものだそうだ。「私個人と主人個人を無理矢理擦り合わせている訳ではなく、ファッションに限らずですが自然にお互い好きなモノが似ているんです」とタカコは言う。同じような格好をすることはカップルにとっては愛情表現の一つだと言ってもいい。カップルはお互いのスタイルについて話し合ったり、何を着て出かけようかといった何気ない会話をすることで、お互いをより深く知っていくのだ。

 

Image courtesy of Tokyo Fashion.

しかし格好を似せることで、相手と一緒にいなければ自分らしさを失ってしまうようなことになるのであれば、慎重になったほうがいい。自分の全てを意図的に変えればペアとして相手によく似合うようになるからという理由で、相手の特徴を取り入れることもそのひとつだ。仲が良いがゆえに恋人の特徴を取り込もうとするのはいいけれど、意図的に自分自身のすべてを変えようとするのはいけない。限度を決めて、関係性の中でお互いが自分自身のスペースを持てるようにすることが大切ではないか。「ファッションに限らず “衣・食・住・遊” 全ての物事において……バランスが一番だと考えます」とマサオは言う。このカップルは、個人として、そしてペアとしての自己表現において、その限度を心得ているのだろう。「私は私ですし、主人は主人ですし」とタカコは言う。「それが合わさって私たちになるのでお互いを受け入れて認め合って補い合う事で、個人の事も2人の事もお互いを保っている感じですね」

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なぜカップルはペアルックをするのか、あれこれ言う余地はもうないはずだ。それがただ楽しむためでも、相手への誠意を示す手段だとしても、程良いバランスを保つことがとても大切だ。ファッションでも何でも、2人の関係を終わらせていいものは無い。最後に愛は勝つのだから。

 
Written by Vania, translated by Chinatsu.
Featured image courtesy of Matcha.

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