夢は絶対叶うのだと、SWEET POISON CUPCAKEのTempest Paigeが教えてくれる!
Tempest Paige (テンペスト・ペイジ) は、シンデレラにも引けを取らないほどの幸せを手にした。原宿のストリートファッションのマニアだった彼女が、ニューヨークに自身の店舗「SWEET POISON CUPCAKE (スイート・ポイズン・カップケーキ) 」を持つまでになったストーリーを聞くと、彼女は本当に夢を叶えたのだと思える。そんなTempestさんに、経営者としてのあり方や、原宿ファッションへの気持ちが、ただのマニアだった頃と比べてどのように変化したのかを聞いてみよう。
自己紹介をお願いします。
こんにちは! Tempest Paigeです。25歳の経営者で、日本のストリートファッションのコミュニティーに参加してほぼ13年になります。
原宿ファッションに夢中になったきっかけは何ですか?
いろんな要素が関わっています。中学生の頃は、ヴィジュアル系の音楽に興味津々でした。まずアニメを通していくつかのバンドを知って、そうしているうちにMalice Mizer (マリスミゼル) とMana様を知ったんです。オンラインのKiss Doll (キスドール) でもよく遊んでいました。天才ピクセルアーティストたちが生み出した、ピクセルで描かれた小さな着せ替え人形のことです。中にはロリータファッションをフィーチャーしたものがいくつかあって、それで調べてみることにしました。
あなたにとっての原宿とは?
原宿はたくさんの人にインスピレーションを与えてきた場所ですね。デザイナー同様、消費者にも。最盛期には、日本のオルタナティブファッションシーンの土台を築いた、クリエイティブなアパレルショップが数多く存在していました。
ここ数年で、あなた個人のファッションはどう変化しましたか?
初めて日本のストリートファッションに出会った時、私のスタイルは初級のゴシックでした。暗い色のコーデが好きで、当初はただただゴスロリが着たかったんです。その後、甘ロリが目に留まって、そのスタイルにすっかり魅了されました。ギャルファッションや、『LARME (ラルム) 』などの雑誌で取り上げられているようなブランドからもインスピレーションを受けていますね。一つの美的価値に囚われないようにしているんです。気に入るアイテムがあればそれが何であれ、自分の普段着に取り入れる方法は考えられますからね。
SWEET POISON CUPCAKEはどのようにして誕生したんですか?
2000年代後半、ロリータ界ではデザートを模したジュエリーを作るのが流行っていたので、私も作ってみたんです。ですが同年代のロリータ友達があまりいなかったので、リングを学校に持ち込んで、クラスメート相手に売り込みました。そこから、物事が大きく進んだんです! 最初はデザイナーとして、その後ほかのブランドのアイテムを取り扱うようになってからは販売業者として、地元のアニメコンベンションに出店するようになりました。
SWEET POISON CUPCAKEのコンセプトは、「ユニークで変わったものなら何でも揃っている」です。ポップカルチャーショップでもあり、アパレルショップでもあり、キャンディーショップでもあります。普段はオンラインでしか見つからない商品を、町の人たちがお買い物できるようにしたいんです。私が若い頃、実際にお店でお買い物をする経験は、やっぱり特別なものでした。楽しくて居心地の良いお店づくりに力を入れなくなったところが多いんです。SWEET POISON CUPCAKEに来てくれる人みんなに楽しんでもらって、満ち足りた気持ちで帰ってほしいなと思っています。
お店のオープンにはどのように取り掛かりましたか?
母のサポートと運によるものが大きかったと言わざるを得ませんね。最初の店舗の広告をCraigslist (クレイグスリスト) (※) で見つけてくれたのは母でした。いつかは自分のお店を持ちたいと思っていましたが、それはずっと先のことだと考えていました。お店はニューヨーク州ロチェスターのThe Village Gate (ヴィレッジ・ゲート) の中にあります。かつての工場を改造して作られたモールで、地元の人々によって運営されるショップやレストランが入っています。
※アメリカの個人間での取引ができるネット上の情報掲示板
お気に入りの商品は? 初めて来るお客さんにおすすめしたい商品はありますか?
初めてのお客さんが何に興味を持っているかによります。たくさんの商品を取り扱っていますし、店内は色とりどりです。オルタナティブファッションにあまり馴染みのない人は、圧倒されてしまうかもしれませんね。そうしたお客さんには、たとえばハローキティといった既存のキャラクターの商品を置いているコーナーなど、親しみやすいものをご案内することもあります。でも私がおすすめしたいのはやっぱりハンドメイド商品です。私が愛情込めて作っていますし、ほかでは手に入らない一点ものなんですよ。
SWEET POISON CUPCAKEでの一番印象に残る出来事を教えてください。
一番印象に残っている思い出は、ちょうど去年のハロウィンです。私の地域では、お菓子をもらいに行ったりあげたりすることが禁止されていて、家での集まりを開くことができませんでした。そこで当日はお店を開けて、仮装をして来てくれたお客さんには割引をすることにしたんです。少ししか来ないだろうなと思っていたところ、たくさんの人が来てくれて、しかもみんな仮装していたんです! みんなとても喜んでくれて、こんなご時世でも何かを成し遂げられたことがうれしかったです。
原宿ファッションへの気持ちは、最初に知った頃から変わりましたか?
変わったと思います! 私は流行やコミュニティーの評価をあまり気にしません。自分の好きなものを着ますし、多種多様なスタイルを組み合わせることや、西洋のコミュニティーが「ルール」と定義する境界線を押し広げることさえ恐れませんよ。
お店を経営する中で直面した一番大変だったことは何ですか?
原宿のサブカルチャーに精通していない人たちにどうやって売り込むか、とても悩みました。最初の数年は、取り扱っている商品が何なのかサッパリ分からず、アニメすら知らないお客さんがほとんどでしたし。そのギャップを埋めようと、たくさんの種類の商品を取り扱うようにしていました。しかし最近はソーシャルメディアの影響で、オルタナティブファッションやアニメが主流になってきたんです! 最近ではほとんどのお客さんがオルタナティブスタイルをよく知っていて、挑戦してみたいと思っていますよ。
10年後のSWEET POISON CUPCAKEとは?
今のただひとつの目標は、オンライン化すること! 願わくばオンライン販売に盛大に返り咲きたいです。10年以内に叶うといいな。
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Introduction and questions by Vania, translated by Chinatsu.
Images courtesy of @tempestpaige.