Vol. 3 第2.1号

1940年代の日本を振り返ると、着物やその他の伝統衣装が実に一般的であった。しかしながら、現代では洋服が普通となっている。わたしたちは文化的なアイデンティティーが——特に若い世代で——失われるのを心配する必要はあるのだろうか? その必要はないかもしれない。こちらは田中優さん。文化服装学院に在学するこの若いデザイナーは、伝統衣装を別の目的に利用したり、新たにアレンジしたりするだけではなく、ビニールなどの主流ではない生地を使用して、伝統的なファッションを再び創り出し革新する。田中さんに「和」というコンセプトや、日本的美学を新たに考案すること、伝統的なファッションの未来について伺った。   COMMunity (コミュニティー) に自己紹介をお願いします。 こんにちは! 私の名前は田中 優です! ひたすら洋服を作っています。ファッションを愛し、日本を愛してやまない21歳服飾学生です! 田中さんは現在は、名高い文化服装学院の3年生ですね。そこでのアパレルデザイン学生としての生活はいかがですか? 入学当時は同じ目標を持つ仲間たちと出会い、私は負けず嫌いなので、ひたすらに知識、技術、何もかも習得しようと毎日励みました。でも課題は多いので、課題を一つ一つこなしながら、個人案件やコラボレーションなど、両立しながら取り組んでいます。     田中さんの意見では、アイデンティティーの形成において、ファッションはどれほど重要ですか? 私は中学生の時すごく悲しい事があって、それを紛らわすために絵をひたすら描いていた時期があって。でもある時この気持ちを洋服にして表現してみたいなって思って、それからはずっと取り憑かれたように洋服を作ってます。多分、私の作る洋服は私自身だし、鏡みたいに、自分を見ているんだなって思う時があります。 田中さんにとって「和」という言葉はどういう意味ですか? この言葉はとっても重要な言葉です。私にとってこの言葉はファッションに取り入れる言葉でもあるから、デザイナーとしても慎重になります。簡潔に言うなら、日本の心だと思います。     日本の伝統は、若者の間で衰退していると思いますか? 衰退していると思います。若い人達は表面的な日本の伝統文化しか知らないと思います。私は日本のグローバル化に伴い、伝統文化の衰退をテーマにしたコレクションを担当した事がありますが、そういった活動を通し、もっと色々な人に日本の真の美しさ、というものを知ってもらいたいですね。 日本の伝統的な服以外で、田中さんのデザインにインスピレーションを与えるものは何ですか? 現代における社会問題、いわばニュースですね。あまり表に出てない問題とか、以前は現代のネオン街で働く売春婦をテーマに制作したこともあります。私はデザイナーなので、毎日アンテナを張っていなければなりません。敏感にとらえやすいんだと思います。地球の事、環境の事、社会の事、デザインソースはそういった中から受ける事も多いです。     田中さんのデザインプロセスについて教えてください。 インスピレーションを受けたら、すぐに手帳か携帯にメモします。メモには感じた言葉、詩、素材のイメージなどを書き留めます。インスピレーションが歴史的なもの、文化だったり、ある事柄についてだったら、勉強します。図書館で調べる事が多いです。それも、より良いデザインが生まれる為の過程です。 そして素材はイメージに合うものが見つかれば良いのですが、最近はずっと自分でグラフィックを制作し、デジタルプリントをしてメインの素材を作ります。大体作品を1着制作するのに1ヶ月くらいかな。でも製品だと2週間くらいで作ります。 将来の目標と夢は何ですか? 私の目標はファッションデザイナーになって自身のブランドを設立し、世界的に活躍できるデザイナーになる事です。絶対に叶えます。 夢は、草間彌生さんとコラボレーションする事、かな? 笑 私が中学生の時救われたのは、草間さんの作品だったから、何か恩返しできる事がしたい。     最近一番気に入ったカルチャー的なものは何ですか? それはどうしてですか? 映画「蜜のあわれ」。最近見た映画なんだけど、老作家と金魚少女の物語で、家で飼っている金魚が少女となって老作家のおじさまと暮らすストーリーなんだけど、幻想小説をもとに作られてるから、初めから終わりまで、なんだか夢の中にいるような映画。そしてなんといっても作品のビジュアルが好き。おすすめの映画です! マストハブ・アイテム5つを教えてください。 シュウウエムラのリップ、名刺、お茶、充電器、wi-fi 最後にひとことお願いします。 この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

昭和生まれの日本のイラストレーター、鶴田一郎さんは、アールデコや美人画などの江戸時代の美術から影響を受けている。伝統と近代的要素を融合させた彼の作品は、現代の美人画と称されている。鶴田作品には、強いけれど繊細、傷つきやすいけれど自信を秘めた魅惑的な女性たちが、心地良い空間に登場する。彼の芸術性に敬意を示す最善の方法は、絹の着物を纏った美しい女性を撮影する以上のものはないだろう。     Model: @kana_tiala_pink Photographer: @misa_kusakabe Shoot direction: @choom.online Styling: @choom.online Written by Kay, translated by

『The COMM』は昭和時代後半の、多くの作品が残っているモデルの1人、山口小夜子さんに敬意を払っている。この撮影では、山口さんの象徴である資生堂の広告を、昭和時代の典型的なファッションである赤い着物で再現している。この撮影のメイク、大胆な色や柄は、人気絶頂だった1970年代の山口小夜子さんの魅力的なエネルギーを捉えたモダンの要素を備え、ハレの日のコーディネートを表現する。     Model: @nfkimono Photographer: @misa_kusakabe Shoot direction: @choom.online Assistance: @ranelagh_harder Written by Cora, translated

Kimono Sheila (キモノ・シーラ) として知られるSheila Cliffe (シーラ・クリフ) さんは、東京を拠点とする世界的に有名な着物スタイリスト、作家、そして研究家だ。着物の着付けの資格と、教育の資格を取得した最初の外国人の1人であるKimono Sheilaは、毎日着物を着て、世界中で着物についての講義を行っている。2017年、Sheilaさんは『The Social Life

戦後の困難な時代であったにもかかわらず、昭和時代後半にあたる1950年代から1970年代の日本は繁栄と幸福に包まれていた。この時代が日本の黄金時代と呼ばれるのも当然だ。昭和時代を体験してみたいなら、以下に紹介するレトロスタイルのおでかけスポットにとっておきのリバイバルコーディネートを着て行き、ヒッピーなファッショニスタになろう!   Image courtesy of Shigenobu Matsuzawa via Gurunavi. デンキヤホール デンキヤホールはタイムワープしたような気分を味わうのにぴったりの場所だ。昭和時代の遺物や思い出の品があふれるこのカフェは、開店から100年以上経っている。デンキヤホールの1950年代の装飾からはノスタルジーが醸し出されていて、当時の日本で人気だった定番メニュー——意外かもしれないが、ナポリタンスパゲッティとメロンクリームソーダだ——を楽しみながらInstagramの写真を撮るのに最適だ! Website   Image courtesy of Goin’

ピアスやイラストのアートプリントの販売から『London Fashion Week (ロンドンファッションウェーク) 』のモデル、LAZY OAF (レイジーオーフ) との仕事まで、Elizabeth Whibley (エリザベス・ウィブリー)

戦後の苦難から、繁栄のバブル経済まで、昭和時代は相反するものが生じた時代だった。ファッションは質素で実用的な服から、今やその時代を代表する大胆で鮮やかな配色のものへと進化した。はっとするほど魅力的な昭和ガールズ・せいらとさくらをフィルム写真で紹介する。二人とも古着の愛好家でRRR (アール) のショップスタッフだ。 色鮮やかなコーディネートに、おやすみクラブ——中野を拠点とし、大胆なグラフィックデザインの洋服やアクセサリー、手作りのぬいぐるみなどを扱うショップ——のバッグを合わせ、二人は古き良き時代を回顧する。     Location: @oyasumiclub Models: @24seira24 @sakura__ra_ra Photographer: @choom.online Assistance and BTS

インターネットを使ったことがある人なら、"Kawaii" (「カワイイ」) を知っているだろう。そして、おそらく多くの人は「"Kawaii"と言えば?」と聞かれたら、「ハローキティ」と答えるのではないだろうか。 "Kawaii" はただの形容詞ではなく、単なるスタイル以上のものだ。歴史の一部、政治的な声明、人生のあり方である。前田富祺氏監修の『日本語源大辞典』によると、可愛いの語源は顔を赤らめるを意味する「顔映ゆし (かほはゆし) 」が転じて「かわはゆし」で、恥ずかしがる様を表していた。根本的には、英語のcuteと同じ意味の語源を持っているのだ。だったら、どうして「cute」では物足りなく感じるのだろうか? どうして、日本語の「カワイイ」に込められた膨大な含意——パステルカラー、リボン、擬人化されたもの——を伝えることができないのだろうか? 答えを見つけるには、日本の歴史を掘り下げる必要がある。「カワイイ」というコンセプトは特定の時代に帰属しないが、その種は第二次世界大戦後に蒔かれたことがわかる。文化学園大学の講師Toby Slade (トビー・スレード) 氏は「Introducing

ようこそ! 『The COMM』Vol.3第2号「リバイバル」です! 時には、前に進むために過去に目を向ける必要があります。ファッションは一定の周期で繰り返すと言われています。Y2Kやe-boyとe-girl (※1) のような現在のトレンドの多くは、過去のトレンドを余り手を加えずに取り入れたものです。もしそれが本当なら、もう着なくなった昔の服を全部寄付するのは少し待ってください。近い将来、きっとまた着る機会があるかもしれません。 今号では、歴史上の各時代を通じて、日本のストリートファッションのベストスタイルを紹介していきます。それぞれの時代で、独自のスタイルが確立されています。懐かしさや愛おしさを感じるものもあれば、「なぜこんなものが??」と思うものもあるでしょう。ですから、それぞれの時代を探求していくことで、あなたが忘れていたスタイルや、存在すら知らなかったスタイルを発見できるかもしれません! PART ONEは、63年間という日本で最も長い時代、「昭和」から始まります。昭和のファッションは、戦後、劇的に変化し、そのスタイルは10年ごとに大きく様変わりしてきました。ロカビリーからMODファッショニスタまで、スタイルのインスピレーションの流れが滞ることはなかったのです。西洋のトレンドに加え、1920年代の銘仙ブームから1970年代の山口小夜子スタイルに至るまで、着物ファッションも長年人気を維持していました。『The COMM』は、日本古来の芸術を再構築するアイコニックなアーティストや、文化遺産をデザインに取り入れる若いデザイナーからインスピレーションを得ています。 PART TWOは、おそらくほとんどの人にとって馴染みのある時代、「平成」です! 平成は、特に原宿と渋谷でサブカルファッションが大流行しました。週末には大勢の人々が街に繰り出し、ハンドメイドの最新作を披露しました。ファッションの流行は、ファッション業界によって決められるのではなく、路上で生まれたのです。デコラ、ギャル、フェアリー系、ロリータなどのよく知られているスタイルは、FRUiTS、KERA等の雑誌で特集されました。もちろん、これらのスタイルは完全に消えたわけでありません。渋谷に行けば、ギャルの一人や二人は見かけるでしょうし、ロンドンではロリータティーパーティーが楽しめます。 最後のPART THREEは、現代、「令和」です!