4月 2021

わたしたちの多くが、いつの日かステージ歌って踊るアイドルになることを夢見る。Beckii Cruel (ベッキー・クルーエル) は12歳でそれをやってのけたのだ! YouTubeでJ-POPの歌「男女」の踊りをカバーした姿が急速に広まり、彼女は一夜にして有名人になった。わたしたちは、ベッキーを迎えてアイドルとしての人生と今後のお話を伺った。   自己紹介をお願いします。 Beckiiです。25歳でロンドンに住んでいますが、マン島で育ちました。私はYouTuberとして仕事を始め、日本でアイドルをしていたこともありました。また、2019 年にはPepper StudioPepper Studio (ペッパースタジオ) という自分のインフルエンサーマーケティング会社を仲間と共同創立しました。 日本であなたは一夜にしてスターになりましたね!

涙、涙のステージ。あどけない目をした童顔の少女たちが、チームメイトや友人、仲間に別れの挨拶をしながらむせび泣く。アイドルの卒業公演では普通に見られる光景だ。しかしその悲しみにくれる顔は決して癒せないものではない。なぜなら5分で笑顔に変わるのだから! 卒業するアイドルはより大きく優れた存在へと成長しつづけるのだ。さあ、高揚感あふれるダイナミックなティーンの曲で盛り上がろう。     J-POPの黄金時代、中森明菜や工藤静香のようなスターは「卒業」する必要はなかった。なぜなら当時は「卒業」という概念がなかったからだ。70、80年代のアイドルはシンプルに引退したが、そこには決定的な「最後」という感覚があった。わたしたちがいま理解する「卒業」という表現が定義され、文脈を持つようになるのは、おニャン子クラブの中島美春さんと河合その子さんがグループから離脱したときだった。折しも、2人の離脱は日本の卒業式シーズンとピッタリ重なり、もともとおニャン子クラブのコンセプトは放課後のクラブ活動だったこともあって、プロデューサーはその表現をビジネスチャンスと見てブランド化をはかった。TVに映し出された卒業セレモニーとそれに続く卒業ツアーは多くの日本人の心に響いた。それは、2人の貢献を認め敬意を表してくれたメンバーたちに対する、盛大な感謝だった。 アイドルを讃えるシンプルな卒業式が、 グループとブランドを存続させるための手段となった。 しかしその後、モーニング娘。の登場で状況は一変した。アイドルを讃えるシンプルな卒業式が、グループとそのブランドを存続させるための手段となったのだ。メンバーは替わってもモーニング娘。は永遠、ということだ。それまでファンは好きなアイドルの言動のひとつひとつに泣き笑いし、誰かがメンバーを離脱すればファンも去った。しかしメンバーがしょっちゅう「卒業」するモーニング娘。では、ファンは新しい「推し」へ簡単にサポートを乗り換えることができた。サポートを乗り換えることができた原因は何だろう? もちろん、インターネットだ! アイドルに関する情報はもはやTVや雑誌に限定されない。ファンは、特定のアイドルの人物像を以前よりずっと詳しく知ることができるし、さらに重要なことは、アイドルの活動期間が短いことによってますます彼女たちの良さがわかるようになったことだ。その後のAKB48や乃木坂46のような女子アイドルグループは、これを少し作り変えて取り入れた。たとえば、さくら学院のメンバーは日本での自分たちの中学卒業に合わせてグループを「卒業」する。 どのアイドルにもティーンの時代に別れを告げ、その先へ進むべき時がやって来る。というわけでキーワードはこれだ: ティーンの時代。「卒業」は大人になる瞬間。一見とても残酷に見える。決められた年齢になるとグループを去らなければならないから。なぜこのままではダメなのか? スキルを磨いてアイドルでいつづけることが許されないのはなぜ? 若さと、ティーンエイジャーの持つ若々しい活力はアイドル特性の中でもとりわけ貴重な美点なので、原動力はフレッシュな年齢だと仮定するのはたやすい。しかし、それではアイドルの意思はどこにもない。アイドルは自分のアイドル生命が短いことを知っており、わき目も振らず頑張らなければならないことも理解している。さくら学院には校則がある。「卒業まで常に完全燃焼すること」。多くのアイドルの卵たちは、卒業までの持ち時間が長くないことを知りつつ、ゴールを目指してがむしゃらに努力する決意を固めて、これらのグループに集まってくるのだ。   Image courtesy of ARAMATHEYDIDNT