ザ・イベント
なめらかな着物、ネオンラテックス、パステルカラーのビロード。どこへ行っても色彩や手触り、音で感覚が満たされる。まるでお菓子屋さんにいる子供みたい――「きれい」というキャンディに目移りしている。カワイイやレトロ、サイバー、スケーター、パンク…何もかもがここにある。コーディネートを通じて、一人一人が個性を発揮するのが感じられる。様々なジャンルが巧みにブレンドされた、多彩な音楽が聞こえている。ネオン電球が鮮やかなブルーとピンクに明滅する中、鮮やかな黄色の髪、大きなアフロヘア、腰まであるブレイズヘアの波間を縫って進む。東京の新顔クリエイティブたちが今宵集まる――世界を支配するために。…そう、アート革新の世界を!
渋谷のEDGEofで、ON-1 Collectiveが開催したイベントで、『The COMM 』は初めてのファッションショーを行った。このON-1 Collectiveの第6回目のイベントは、クリエイティブな人々が集まって、作品を披露するためのものだった。EDGEofというビルは、東京最大の音楽ショップであるタワーレコードのすぐ隣にある。このとにかく大きい黄色のビルをなぜか見逃してしまっても、接着剤を塗った着物でハローキティショップを転げ回ったかのような格好の女性を見かけると、自分が正しい場所にいるとわかる。(これは今回のショーのモデルの一人、ちゃみさん!)
※ON-1 Collectiveはメディアプラットフォームで、東京に活動の拠点を置くクリエイティブなコミュニティーを毎月紹介するイベントです。
イベントは「Amazon Fashion Week TOKYO (アマゾン ファッション ウィーク東京) 」と重なる時期に開催され、『The COMM』はON1 Collectiveでテクノロジーとファッションの橋渡しをするという特権を得た。来場者の到着とともに、dosing (ドーシング) というミュージックコレクティブが、落ち着いたヒップホップの演奏を始めた。
そして『The COMM』のファッションショーの時間になった。来場者にはランウェイの回りに近づかないようには頼んだが、ランウェイと観客の間に隔たりはなかった。照明が落とされ、モデルがDizzee Rascal (ディジー・ラスカル) の『Don’t Gas Me』に合わせてランウェイを歩き始めた。距離が近く、親しみやすい雰囲気で、コーディネートのすべてを詳しく見ることができ、その近さが相互作用を感じさせた。『The COMM』は、ファッションショーに参加できない人のためにInstagramでライブ配信を行った。モデルたちは、全方位カメラを取り付けた自撮り棒を持って歩き、自分自身を撮影した。これによって観客の参加度合いが高まった。モデルのセルフィーに写り込んだからだ。
モデルたちは『The COMM』のVol. 1で注目した、様々な東京ストリートファッションで着飾った。ウーマさんといちかさんは「サイバー」(何もかもが鮮やかなネオン) 。ちゃみさんは「『カワイイ』革命」(パワーパフガールズだらけのパステルピンクのスカート)。ぴょんさんは「コミュニティー」 (ダークカラーのファーとアニマル柄)。マノン・マルグリットさんと「SALZ Tokyo」のアンジさんは「ネオ・トラッド」(古着の着物からアップサイクルしたブラレットやスカートと、現代風の着物)。すべてのモデルたちは歩き終わった後、観客のためにランウェイに集まってポーズをとった。そしてその後は舞台裏には戻らず、会場内に散っていった。
ファッションショーの後、問題児 (QUESTION CHILDREN) が、日本の伝統音楽とレゲエを独自に組み合わせた音楽を演奏した。その次は、身体にUVペイントを施して踊り、わたしたちをうっとりとさせてくれた知夏七未さん。UVペイントによる視覚を刺激するというテーマを引き継ぎ、、万美さんは壁に向かって息を呑むような書道を披露した。想像力に富んだアートの後、歓談時間にはAlly Mobbs (アリー・モブス) のDJで、異世界から来たようなようなヒップホップが流れた。締めくくりのパフォーマンスはSatellite Young (サテライトヤング) によるもので、80年代の東京 (ヴェイパーウェイヴが溢れる) へタイムトラベルしたかのように思わせてくれた。イベントの他のパフォーマーについてもっと詳しく知りたい方は、こちらからチェックしてみてください!
『The COMM』はイベントに差し色を加える、という仕事を完璧にこなした――黒い服を着ている参加者の中で、ピンク色のラテックスが目についたなら、それは『The COMM』のモデルで間違いない。ランウェイを歩くモデルたちは、エフォートレスなクールさを見せてくれた。そしてショーは『The COMM』の信念にぴったり合うイメージを与えた――ファッションやアイディア、テクノロジーの多様性。
ショーは大成功で、イベントで評判になった。誰もがフレンドリーで、踊っているときの表情は笑みで彩られていた。 (本当に身体を塗っている人もいたけれど)。すべてのパフォーマンスが素晴らしく、東京から生まれたアートとイノベーションを覗いてみるのは非常に面白かった。多様性と親しい仲間、そんな刺激的な夜。ぜひ次のイベントにも行きたくなった。